「蠟美人」(横溝正史)

怪しい人間だらけの中で事件が進行

「蠟美人」(横溝正史)
(「首」)角川文庫

「蠟美人」(横溝正史)
(「花園の悪魔」)角川文庫

法医学界の異端・畔柳博士は、
白骨死体から蝋で肉付けをする
「復顔術」を行うと
マスコミに発表、
センセーショナルを巻き起こす。
完成した蝋人形は、
百貨店で開催される
防犯展覧会に出品されるという。
除幕され姿を現した人形は…。

その姿は殺人事件を起こして逃亡、
後に自殺体で発見された妖艶な女優・
立花マリそのものだったのです。
立花マリとは何者か?
まずは登場人物一覧を。

畔柳貞三郎:法医学博士。
 身元不明の遺体に復顔術を施す。
瓜生朝二:若手彫刻家。
 畔柳博士の復顔術に協力する。
立花マリ:元スキャンダル女優。
 夫殺害の上、失踪。
伊沢信造:人気作家。立花マリの夫。
伊沢加寿子:信造の母。
 教育者・学園経営者。
伊沢徹郎:加寿子の次男。教育者。
伊沢早苗:加寿子の娘。気位が高い。
雄島隆介:早苗の婚約者。若手政治家。
佐藤亀吉:身元不明の白骨の発見者。
杉本もと:畔柳家使用人。耳の遠い老婆。
金田一耕助:探偵。
等々力警部:金田一耕助の相棒。

伊沢家の長男・信造は、
奔放な性格ゆえ、
家族と衝突していたが、
マリと結婚し、亀裂が深刻化。
ある夜、信造の悲鳴で
家族が駆けつけると、
信造は血を流して死亡、
ナイフを持っていたマリが逃走。
教育者一家である伊沢家は
スキャンダルに突き落とされていた、
という状況下でのことなのです。

本作品の読みどころ①悪人は誰?
立花マリはいかにも悪人、
伊沢家の面々も抜け目なさそう、
畔柳博士は狂人じみている、
亀吉老人も何やら怪しい、
瓜生は左手の小指が
第一関節から欠落していて
絶対何か秘密がある。
怪しい人間だらけの中で
事件が進行していきます。

本作品の読みどころ②
復元した顔は正しいのか?

復顔術という眉唾物の技術によって
現れた姿が、
行方不明の殺人犯・立花マリ。
しかしそれを施した畔柳博士も
伊沢家と関わりがあったのです。
復顔術は果たして正確なもの?
それともインチキ?

本作品の読みどころ③驚愕の結末
これだけ入り組んだ事件ですが、
結末は意外です。
金田一耕助が真相解明に動くのですが、
捜査よりも老婆との世間話に
時間をかけている始末。
果たして結末はいかに?

謎解きの要素よりも奇想天外な設定で
読ませる横溝正史の傑作短篇。
ミステリが似合う
秋の夜長にお楽しみください。

※オルゴールの中に小指の骨が
 入っていたという設定は、
 たしか「薔薇と鬱金香」でも
 使われていたはずです。
 復顔術も何かに使われていたと
 思うのですが思い出せません。

(2020.9.27)

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

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